2019年5月8日水曜日

屋久島観光PRポスター完成!

ちょいとブログの更新が追いついてないのですが、いろいろやってます。脳みそが追いつきません!
それでこの冬をほぼ費やして制作したものが表舞台に出てきました。屋久島町の観光PRポスターです。商工観光課の職員さんたち、古賀さんをはじめガイドメンバーたちと話し合って制作。フェイスブックにあれこれ連載投稿していたものをこちらにも転載いたします。

 下記の文章はけっこう長いので、お時間のある時にどうぞ。ポスターは屋久島町のHPよりご覧頂けますし、無償ダウンロードして活用可能です!

↓ 以下はFB上で連載投稿していた文章です。 ↓


●屋久島町観光PRポスター連載#01
【 001_A4_水が感動的 】


「1 わたくしたちは、島づくりの指標として、いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々が感動を得られるような、水環境の保全と創造につとめ、そのことによって屋久島の価値を問いつづけます。」

 写真は白谷雲水峡のあの沢です。人は水すらも自分の所有物として考えてしまうんですが、鹿にとっても苔にとっても植物にとっても、はたまた屋久杉にとっても共有するものです。それが「いつでもどこでも」飲めるってのが屋久島のすごいところ。人間が飲めれば、他の生物もオッケーかと。笑。
 この場所以外にもたくさん水を表現する場所は無数にあるんですが、一応、観光のポスターということで、観光スポット的な写真。とは言いつつ、この場所は冷静に考えるととてもすごい場所でもあるんです。増水して沢が渡れなくなる場所でもあるものの、登山道でもあり、沢でもあり、水飲み場でもあり、写真スポットでもあり、夏は顔まで洗える!笑。水の通り道を人も通り道として使っている所です。自然の中に人がいることを再確認できる場所でもあります。
 で、屋久島の観光というのはやはり「自然」なるものがメイン。そこからいろんなものが生まれています。順番としては、自然の上に美しい風景があり、美しい風景があるから観光という人の生業も動きます。農業や漁業もしかり。この順番が逆になったら屋久島はその価値を失います。そんな意味を込めて、この写真を使わせてもらいました。


FUJIFILM X-E1 XF35mm  f16 7.5秒 -2露出補正 ISO200



●屋久島町観光PRポスター連載#02
【 003_A4_憧れが現実に 】





「2 わたくしたちは、自然とのかかわりかたを身につけた子供たちが、夢と希望を抱き世界の子供たちにとって憧れであるような豊かな地域社会をつくります。」《屋久島憲章》

 今回のポスター制作で最もすんなりスムースにデザイン&写真が決まった一枚。「屋久島憲章」の中でも僕が最も好きな条文です。ここ一年ぐらいは、「5G」やら「ai」やらが色々ともてはやされる時代ではあります。子どもを育てる身としては「5G」にも「ai」にも決してできないことを教える必要があります。「5G」にできることは「5G」がやればいいわけですし、「ai」にやってもらうことは子育てではありません。笑。
 無理ではありますが、このポスターを全国の小中学校に配布したいぐらいの気持ち!笑。今、屋久島で子育て&子どもに関わっている人はこの条文に大きくうなずくのではないかと。僕も初めて読んだ時、ブルブルっと体が震えました。自然と戯れる子どもがわんさかいる屋久島はそれだけで豊かな社会なのでは!大人はもうちょっと頑張らねばですね。笑。
 写真は屋久島の夏にはよく見られる日常です。笑。気合いを入れて、「よし、アウトドアに遊びに行くぞ!」ではなく、「暑いから川へ行こう」ぐらいの感覚。島中の川でこんな風景が繰り広げられています。もちろん海でも同じ。安全な川や海は子どもたちにとっては最強の環境です。もちろん大雨が降っている時なんかは遊べませんが、「川は危ないから今日は行けない」というのも自然の上で生きていく非常に大事な感覚。そんなことも同時に教えたいわけです。
 観光のポスターなんですが、そんなに観光していない写真ではあります。しかし、平和であったり、安全であったり(大人の目はもちろん必要)、その辺がちゃんとしていないとこんな写真は撮れません。今、屋久島では当たり前の風景ですが、戦時中であったらこんな光景は無理です。子どもたちが両手を広げて遊べる環境であり、大人はもっと両手を広げて、ガッツポーズするぐらいの島なんです。だから自信を持って屋久島に遊びにきて欲しい!こういう世界は人類の「憧れ」であり、屋久島にはそれが「現実に」あるんです。今の時代だからこそ、最も大事なことなんじゃないかと思います。屋久島憲章を作成した柴鐵生さんに感謝の言葉しか浮かびません!


FUJIFILM X-T2 XF14mm  f8 1/160  ISO200


●屋久島町観光PRポスター連載#03
【 004_A4_岳参り 】
3 わたくしたちは、歴史と伝統を大切にし、自然資源と環境の恵みを活かし、その価値を損なうことのない、永続できる島づくりを進めます。

  島外の人にとっては屋久島は「自然」というイメージだと思うんですが、その「自然」が育て上げた人がここで生活しています。決して人は自然を作っているわけではありません。よく自然を「管理する」とか「保護」するという言葉が聞かれますが、それはちょっと違う感じがするんです。なんとなく人間が神様みたいになっている感覚になっちゃうんですよね。恵みを享受するのが人間で、保護されているのは人間。「自然資源と環境の恵み」が屋久島で暮らす人々の「歴史と伝統」を作ってきたわけです。消えつつある伝統もありますが、それでもなお受け継がれている行事がたくさんあります。
 そこで島のソウルイベントでもある「岳参り」の写真。何パターンか作成して、やはりこの「岳参り」が形になりました。岳参りについて書き始めると、本1冊以上になると思うので、ここでは書きません。簡単にいうと、集落の代表が山の頂上にある祠にお参りに行く行事です。「修験道」や「山岳信仰」的な宗教的な要素もあるとは思うんですが、もう少しシンプルな感じがします。自然と恵みに感謝する感覚で、友達に「ありがとう」というのとはちょっと違う感覚です。根源的というか、心というよりは体が発する言葉というか、そんな「ありがとう」です(うまく説明できません!)。昔、楠川という集落ではトビウオが豊漁だった時に、そのトビウオを持って山に登り、山頂の祠にお参りに行ったそうです。そんな「ありがとう」です。笑。
 屋久島憲章を作成した柴鐵生さんは永田地区の岳参りを復活させた方です。だからこそ、ただ「自然を守ろう!」ではない、自然の上で人が生きていることを再確認させるための狙いもあったのではないかと思います。
 僕は取材名目で複数の集落で行われている岳参りに同行させてもらったのですが、山並みが見え、パッとイメージできる写真だなと思い、宮之浦集落の岳参りに同行した時の写真を使いました。2012年のちょっと古めの写真です。横型のいい写真もありましたが、縦バージョンです。


FUJIFILM FinePix s5pro F5.6 1/1250 -0.3露出補正 ISO200 


●屋久島町観光PRポスター連載#04
【 002_A4_屋久島に呼ばれると人生が豊かになる 】



「4 わたくしたちは、自然と人間が共生する豊かで個性的な情報を提供し、全世界の人々と交流を深めます。」

 実は僕、「共生」という言葉があまりしっくりこないんです。それで語源を調べてみたら、やっぱり明治以降に外国の翻訳で作られた言葉でした。一見、聞こえはいいんですが、どうも人と自然がバラバラになっているような気がするんです。非常に西洋的な感覚というか…。東洋的な感覚で言えば、「共棲」でもいいかなと。笑。後に出てくる「縄文杉」を使ったポスターのキャッチは「共に生きる」です。「共」と「生」を分けるだけでだいぶ感覚が変わってきます。屋久島という土地(自然)の上に動植物が一緒に生きているという感じ。僕たち人間の体も自然が作った生き物ですから。
 自然は生きるための土台であり、その上に動植物が生きている。人間も自然の上に社会を作って生活しているわけです。どうしても人間社会の上にいると自然の上にいることを忘れてしまいがちなんですけどね。台風が来たり、地震があったり、その上で生物は生きています。これまた都会にいたら、感じにくいところではあるんですが。
 逆に「自然、最高~っ!」という考えだけになってしまったら、反社会的になってしまい、これまた変な方向に進んでしまいます。笑。色々とバランスを意識したり、自分の立ち位置をしっかりしておきたいところです。
 そんな「自然の上に動植物が一緒に生活してますよ~」という解釈で、オスのヤクシカに登場してもらいました。繁殖期後半で角がいい感じにトンガっているイケメン鹿。目線いただけました。笑。
 それとキャッチコピーの「屋久島に呼ばれると、人生が豊かになる」。このポスター制作会議の時に古賀さんのリピーターさんが言った「呼ばれる」を元にしています。屋久島のリピーターさんはよく「呼ばれる」という言葉を使うんですが、そんな感覚になるんだと思います。真新しいところに行く感じではなく、なんとなく「お邪魔しま~す」みたいな感じ。そこに「豊かさ」をプラス。観光客数が増えなくてもいいし、大金持ちになる必要もないんです(たぶん)。それ以上に体も心も「豊かだな~」って思える方がどんなに大切か。なので、僕もガイドのお客さんを増やすぞ~!みたいな作戦も立てませんし、お金集まってこ~い!政策もしてません。笑。その辺はボチボチでいいかなと。それよりも、地域のお手伝いをしたり、子どもとの時間を増やしたり、そっちの豊かさを追求したくなる今日この頃です。


FUJIFILM X-T1 XF55-200mm  f5.6  1/80 -1 ISO3200


●屋久島町観光PRポスター連載#05
【 006_A4_地球の上でわたしは遊ぶ 】


「<前文>物質文明の荒波をようように免れた屋久島は、その存在そのものが人間に対する啓示であり、地球的テーマそのものである。」

 この観光PRポスターを制作するにあたって、打ち合わせで決まったことがあります。それは「世界自然遺産は使わないようにしよう」と。世界遺産という考え方は「人類の遺産」。もちろん後世に残していく大事なもの、持続可能な利用をしていくという意味では素晴らしい考え方だと思うんですが、今まではそのブランドに頼りすぎている感じがするんです。島から発信という立場だとしっくりこない。さらには「世界遺産=観光」のような流れも日本国内にあるのも事実。観光をそこに頼っていては次の一歩が踏み出せないのではと。世界自然遺産は本来の意味で理解するのがいいと思うんです。島内から発信するという意味では、観光のツールとして世界遺産を考えるのではなく、そろそろその辺を越えていかねばならない時期に来ているのではないか。本質的な観光を考えていく上で、その次へ進みたいなと。
 憲章の冒頭3行目には「屋久杉を象徴とする森厳な大自然に抱かれ、神々に頭をたれ、流れに身を浄め大海の恵みに日々を委ねて人々が生きた島。」とあります。あえて「所有」という考え方を用いれば、所有されているのは完全に人の方。当たり前なんですが、材料をかき集めて屋久杉を作ることはできませんし、水だって空から降ってくるもので人間が作り出したものではありません。所有ではなく、「頂きます!」という感覚の方がしっくりくるなと。その辺に「日々を委ねて人々が生き」ているんだと思います。これまた都会ではなかなか感じにくいことだとは思うんですが、屋久島に来てフィールドに出ればよくわかります。
 それで、みんなと色々と話している時、「国境がなくなってきている。これからは地球人だよねぇ~」なんて言葉が出てきたんです(かとちん談)。この地球人という発想が、まさに屋久島憲章の「地球的テーマ」とかぶり、キャッチコピーも「地球の上でわたしは遊ぶ」。「話せばわかる」ではなく、「遊べばわかる」って感じです。笑。古賀さんのアイデアで「屋久島のアクティビティをコラージュしよう!」という話になり、10枚の写真をああでもないこうでもないと並べました。デザイン的には最も時間を要し、ノイローゼになりそうになりながら作ったポスターです。笑。食べ物や特産品も出そうと作戦会議したのですが、今回はアクティビティ中心のポスターを制作しました。






●屋久島町観光PRポスター連載#06
【 005_A4_共に生きる 】


「<前文>この島は、はるかな昔から人々の魂を揺さぶりつづけ、近世森林の保全と活用で人々が苦しみ葛藤した島である。」

 最初の企画段階でポスターは5種類作成予定でした。1ヶ月ほどかけて、サンプルは約20種類ほど作成。商工観光課担当のMくんも悩ませてしまいました。笑。最終判断は商工観光課だけに、かなりのストレスだったのでは…。笑。すみません!
 実は決定した5種類のポスターには縄文杉はありませんでした。理由は様々なんですが、その後「やっぱり縄文杉に出演していただこう!」という流れに。他の種類の文面はすでに形になっているし、縄文杉の写真を使うときどうしたらいいかと頭を悩ませました。で、もう一度屋久島憲章を読み返したら、やはり書いてあったんです。「困った時の屋久島憲章?」と思ってしまったぐらい。笑。
 「近世森林の保全と活用で人々が葛藤した島」…。昭和の森林大伐採のことを想像させます。気になる方はNHKの番組プロジェクトX「伝説の深き森を守れ~世界遺産・屋久杉の島~」をなんとか探してご覧ください。「葛藤」どころか「壮絶」だったことが理解できると思います。今の時代からは想像できない、計り知れない「葛藤」があったのだと思います。
 これまたタイムリーな展開なのですが、屋久島高校の演劇部が九州大会でも勝ち進み、この夏に全国大会に出場します!「えっ、何が関係してるの?」といった感じなんですが、実は演劇の内容がまさにこの「葛藤」なんです。タイトルは「ジョン・デンバーへの手紙」。江戸~明治~昭和の屋久島でリアルにあった「葛藤」を高校生が演じています。九州大会では最優秀賞、創作脚本賞を受賞!屋久島の皆さん、屋久島を好きな皆さん、応援してくださいっ!全国優勝も夢じゃな~い!
 ちょっと話がそれましたが、観光シンボルとしての縄文杉以上に、「人々の魂を揺さぶりつづけ」る存在としての縄文杉。これかなと。僕の心の中も整理できました。行くのは遠くて大変だけど、これからも魂を揺さぶって欲しい!
 憲章を作った柴鐵生さんの時代と壮絶さは比になりませんが、令和が始まろうとする時代も「葛藤」があり、すったもんだがあります。逆にいろんなすったもんだがあるからこそ前に進めるわけです。僕が今こうやって書いていることも、人によっては「何言ってんだよ~」とか「それ違うんでない?」とか「もっと言葉を選べ!」とかいろんな考えがあると思うんです。こういうすったもんだこそ、次のステップなのかなと。ひょっとしたら「すったもんだ屋久島!」ってキャッチコピーでもよかったかもしれません。笑。今回の屋久島町観光PRポスターは完成というより、観光再スタートとして捉えるのがいいのかなと思っています。



FUJIFILM X-T2 XF35mm  f1.4  1/750 -2 ISO800

●屋久島町観光PRポスター連載#07<最終回>
【 そろそろ屋久島 】


 6回ほど連載して書いてきましたが、最終回です。GWに入ってしまい、気づいたら元号も変わってました。笑。長い文章ですみません。実際はこの3倍ほどを書いており、かなり削ってます。笑。言葉足らずの部分もあるかと思ってます。「作って、はい終わり!」は責任もなければ、面白みもないので、忘備録的な要素もあっての投稿でした。

 で、屋久島憲章や写真がメインなのではありますが、屋久島の文字に副詞の「そろそろ」というちっちゃいコピーを付けてます。スマホなどで見るとパッと目に入ってきませんが…。屋久島のロゴも数パターン作成。すっきりしたものを選びました。肝心の「そろそろ」なんですが、いろんな「そろそろ」です。

 まだ屋久島に来たことのない人への「そろそろ」。よく「一生に一度は行きたい場所」みたいなアンケートで常に上位にランクインされる屋久島。まだの人はチャンス到来で、「そろそろ」行く決断をしてもいい?笑。非日常でリアルの世界。屋久島だけでしか味わえないリアルを求めて遊びに行く時期かなと。
 次に屋久島に何度も来島するリピーターさんが思うであろう「そろそろ」。屋久島を一度知ってしまうと何度も来たくなってしまう症状になってしまいます。日常から外へ出るべく「そろそろ」屋久島を欲する時期かなと。作られた世界も楽しいんですが、生々しい世界を現場で体感するのも楽しい。何度も来島する方を「屋久島中毒(ヤク中)」と呼びますが、中毒症状を緩和すべく、「そろそろ」屋久島へ。
 そして、屋久島発の「そろそろ」。このポスターは観光PRという大きな目的があるので、今まで温めてきたものが「そろそろ」表舞台に出てくる時期なのではと。大きな流れとしては、昨年、エコツーリズムの全国大会も屋久島で開催されました。屋久島町の公認ガイドもすったもんだしながら「形」になり本格始動(8年ほどかかってます。)。さらには屋久島町役場の新庁舎も完成。「そろそろ」には「そろりそろり」というゆっくりという意味もありますが、前に進んで行く意味合いも。

 他にもいろんな「そろそろ」があると思うのですが、それは見た人、読んだ人の感覚で。この一連のポスターは作り手より、見た人がどう思うかが重要なところですし。僕も令和が始まるこの時代に「屋久島憲章」をじっくり読むことができました。生半可な考え方では絞り出せない表現と言葉たち。とても良い機会でした。今回のポスター制作は新しいことをするというよりも、自分たちの立ち位置を確認してアウトプットする感じ。これがきっかけになって、屋久島からアウトプットをジャンジャンしていけたらなと。5Gとかaiとかディープラーニングだとか、そんな時代だからこそモノ凄い意味を持つ島です。ますます屋久島が持つ意味が深く大きくなっていくなと。そんな意味でも「そろそろ屋久島」。笑。

 まだまだ書きたいことは山ほどあるんですが、それはまたの機会に。屋久島憲章をあの時代に作ってくれた柴鐡生さん、商工観光課のMくんをはじめ職員の皆様、古賀さんをはじめ制作に関わったみんな、この場をかりてありがとうございました。次の「ありがとう」を言い合えるよう、はりきってまいりましょう!